不順な恋の始め方
「ん、ゆ…ゆず、る…苦しいっ」
「知らーん。そない可愛ええことばっか言うてくる柚希が悪いんや。」
「んん、なに言っ……」
キツく結ばれた俺の腕の中で、モゾモゾと柚希が動いている。
でも俺は決して結んだ腕を離すことはなく、柚希をそのまま抱きしめていた。
「なあなあ、柚希さん」
「ん……は、はい」
「ほんまに俺と柚希って、でき婚やったっけ?」
「へ?」
「だって、そう思わへんか? うまいこと行きすぎやんか。 ほんまに、できたから恋愛始めたんやったっけ?」
ほんまに一瞬、不思議で、おかしくて、これが現実なんか何なんか分からんようになった。
そのくらい、嬉しくて、幸せで、どないしようって思った。
せやけど、これ全部現実なんやなぁって俺を見て笑う柚希を見て思う。
……いや、現実やなかったら困るわ。
こんか可愛ええの、他の誰かに渡してたまるか。なんて考えてるあたり、俺は最早溺愛レベルで。
我ながら気持ち悪いなあ、と思った。
それと同時に、俺はたくさんの幸せを噛みしめていた────。