不順な恋の始め方
「玄関で立ち話もなんでしょ。早くあがりましょ」
という、なにやらツッコミどころのある美羽さんの一言をキッカケに私達はリビングへと入った。
そして、2人掛けのソファーに私と美羽さん。テーブルを挟んで向こう側の床には譲と、その譲の膝の上に座っている仁菜ちゃん。
……仁菜ちゃんの位置が少し羨ましいな、なんて思っているのは私だけのヒミツで。
「……で。お嫁さんって、あんた達いつから付き合ってんの? 前の彼女……あの、ちづちゃんだっけ? あの子はどうなったのよ」
興味本位で聞いている様だけれど、やっぱり姉。美羽さんの瞳の奥は真っ直ぐ真剣だった。
そんな美羽さんの瞳に見とれていたけれど、私はちゃんと聞き逃さなかった。……いや、聞き逃すことなんて出来るわけがない。
初めて聞いた〝ちづちゃん〟という名前。
美羽さんは、その〝ちづちゃん〟を譲の前の彼女だと言った。
前に譲が言っていた2年前に別れた彼女というのは、その〝ちづちゃん〟なのだろう。
美羽さんも知っているなんて、もしかしてその〝ちづちゃん〟は家族公認の彼女だったのかな?
なんて、私の頭の中には早くも嫌なことばかりが次々と浮かんでくる。