不順な恋の始め方
「つい、って? なんかあったん? 今日様子おかしない?」
普段は、お酒が弱い事もあるけれど、お酒を飲みたくなることは殆ど無いと言っていた柚希。
そんな柚希がついお酒を飲んでしまいたくなるのには、何か理由があるのでは?
そして、その理由はきっと柚希の様子と関係があるはず……と探偵のような推理で柚希を問う。
しかし
「……何でもないです」
「ほんまにか? そんなことあらへんやろ。ずっと複雑そうな顔しとったやん」
「……そんなこと、ないです。大丈夫です」
俺の推理は外れてしまったのか、柚希は「何もない」の一点張り。
あんまりしつこく聞くのも嫌で、俺はそれならいいと聞き出すことを諦めてしまったが、やはり柚希の表情を見ていて何もないとは思えない。
「……戻りましょう、中に」
「うん……せやな」
何もないとは思えないけれど、聞けない。
俺はなんちゅうヘタレなんやと自分で自分に呆れたし、幻滅した。
それから〝好き〟やとは言うてもらえても、まだそこまで信用してもらえてないんかな?
ちゃんと柚希にとって、近い存在やと思うてたんやけどなあ…… なんて、女々しい事を思う自分にも心底呆れた────。