不順な恋の始め方
「────先輩、森下先輩。」
「へっ? なに?」
デスクにつき、何をするわけでもなくぼうっとしていた私。
そんな私の背後から、とんとんと肩を2回叩くと同時に声を掛けてきたのは菅ちゃんだ。
菅ちゃんは、後方を向いて出入り口へと視線を向けると「編集部の女の子が呼んでます」と言った。
「え?編集部?」
「はい」
「なんでだろう…」
「また坂口先輩絡みですかねー」
企画部と編集部は何かと接点があるけれど、深く絡むのは主に先輩方で。仕事内容での呼び出しではないだろうし、編集部に知り合いなんて……と思っていた私にぼそりと呟いた菅ちゃん
菅ちゃんの予測で間違いないと思うが、変な心配もかけたくないし
「はは、まさか。とりあえず行ってくるね」
と、笑って私はオフィスを出た。
「お待たせしまし……た」
オフィスを出てすぐ右側の廊下に背中をつけて待っていたのは、今朝会った女の子。
長くて綺麗な黒髪が特徴的な、整った顔の女の子。