不順な恋の始め方
「えっ……?」
「子供ができてしまったから、坂口先輩とは別れられないんですか?」
「なんで、それ……」
何故、この子が知ってるの?
私の妊娠の事は社内の人には誰にも言っていないのに………
混乱と焦りと変な緊張感とで、私の額には嫌な汗が浮かぶ。
そんな私の様子を見て、フッと笑った彼女がゆっくりと口を開く
「やっぱり。確信できなかったからカマかけてみたんですけど……意外と引っかかるもんなんですね」
「カマ……?」
「そうですよ。私が貴女と坂口先輩について知っているのは、あの飲み会の日に2人が同じタクシーに乗って消えたこと。それから、貴女達は交際したてで、既に同棲していること。それだけですから」
カマをかけられたという事実へのショックや苛立ちなんかよりも、やはり疑問ばかりが浮かんでくる。
あの日に私達がタクシーに乗って消えたというのは、偶然見かけたのかもしれない。
でも、交際したてだということと、それから同棲をしているということをなぜ確信しているのか。そこが理解できない。