不順な恋の始め方

「私、坂口先輩の事が好きなんです。私が会社に入ってすぐ……2年前から。

私はその頃からずっと先輩にアタックしてきました。でも、先輩はいつも『今はそういうのはええわ』って言って断るんです。それが、最近になって断る理由が『大事にしたい人がおるから』に変わったんです。ちょうど、1ヶ月くらい前に。」


そんな突然、おかしいですよね? と笑う彼女は、笑っているはずなのに哀しい表情をしている。


そんな彼女へ私が掛ける言葉なんて……ない。あるはずがない。



「貴女が会社で倒れたという噂を聞いた事。坂口先輩の断る理由が変わった事。そして、交際をしている事。今まで全く関わっていなかったはずの貴女達がこうも深く関わるようになった全ての原点は〝あの日〟なのではないかと薄々感じてました。」


「だから私に……カマを、かけたんですか?」

「ええ。そうです」


女の勘というものは 時にとんでもなく冴え、そして、とてつもなく鋭い。

彼女は、譲の事を真っ直ぐに好きだから……それ故に、その勘がここまで私を追い詰めることができたのだ。

< 163 / 195 >

この作品をシェア

pagetop