不順な恋の始め方
もう、完全に逃げられない。
何の誤魔化しだって、効かない。
それなら
「……あなたの言うとおりです。私達はあの日をキッカケに、結婚を約束した上での交際をしています。でも、私だって坂口先輩の事が好きだし、一緒に居たいと思っています」
私だって、真っ直ぐ向き合って。真っ直ぐ自分の想いをぶつけないと。
認めて欲しい、なんてとても言えないけれど。真っ直ぐに伝えて、少しでもこの気持ちを分かってもらえればいい。
そう、思ったのに────
「きっと、坂口先輩はそうは思ってないでしょうけどね」
「え……?」
「その気持ち、もし本当だとしても貴女の一方的な想いだと思います。
好きでも何でもない女性に子供が出来て、責任を取るために結婚だなんて。普通面倒くさいだけですよね?でも、坂口先輩の性格上そんな事は言えない」
「……」
「それに、坂口先輩は貴女とそうなる前まで元カノのことを引きずっていたんですよ?」
ドクン、と大きく胸が鼓動を鳴らす。
彼女の全ての言葉にズキズキと痛む胸だったけれど〝元カノ〟という単語にだけは、大きく、そして、鋭く痛んだ。