不順な恋の始め方





「っ、」




ズキン、ズキン、ズキン




胸が、張り裂けそうで。

感覚が、おかしくなって。

もう、息をすることも出来ない。


痛い、なんて完全に通り越していた。




こんな感情、初めてだ。

こんなにも自分が自分でなくなってしまいそうな感情、私は知らない。


それでも、こんな感情になってしまったのは、きっと、彼女の言う事は間違っていないから。



きっと、そうかもしれないから。



彼女の言うとおり、譲は優しいから私の事を放っておけなかっただけなのかもしれない。

あの時、譲が、ちづさんの話をした美羽さんに怒っていたように見えたのは、きっと、ちづさんをまだ好きだったからなのかもしれない。




…………いや


〝かもしれない〟なんかじゃないよね。絶対に、そう。そうに決まっている。






だって






今思えば、私は譲に『好き』だと言われた事がまだ一度も無いのだから─────。





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