不順な恋の始め方



* * *




──────私は、決めた。


譲に〝サヨナラ〟をする事を。





「ごめんね、涼ちゃん。」

「ううん、全然。」


私が、譲の待つ家へと無断で帰らなかったのはこれで2回目。

今日も私は涼ちゃんの家へとお邪魔していたのだ。


そして


「ちゃんと先輩と仲直りしなさいよ」

「あ…うん」


涼ちゃんには、家に帰らない理由を〝喧嘩〟だと話している。

涼ちゃんに嘘をつくのは本当に申し訳ないけれど、本当の事を言えばきっと涼ちゃんは私の為に沢山悩んでしまうから。

だから、ごめんね。許してね。



「ありがと、涼ちゃん」

「うん。またね」

「うん」



扉の閉まった涼ちゃんの家を背に、私は帰るべき家へと向かう。

帰るべき家なはずなのに、 きっと、帰るのはこれが最後になってしまう家。


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