不順な恋の始め方

段々と肌寒くなってきた、ひつじ空の下をひとりとぼとぼと歩く。

あの、譲の事を好きな彼女……中塚美園(ナカツカミソノ)さんと話し終えてから私は何度も色々な事を考えた。



考えれば考えるほど、あの時に私が婚約を受け入れたという選択は間違っていたように思えてきて。

たった1ヶ月……されど、1ヶ月。

譲にとって大切な時間を、私の甘えや、我儘により奪ってしまったことを酷く後悔した。



譲は、まだ、ちづさんを好きだったということ。

ちづさんを忘れたくて、私とあの日カラダの関係を持ってしまったのかもしれないということ。

それから、私の事を好きなわけじゃないのに……きっと、無理をして私と一緒に居てくれるのだということ。



中塚さんの言ったことの全ては、考えてみれば本当にその通りだった。

私はそれに気づかず……いや、ひょっとしたら心の奥底では気づいていたのに気づかないフリをして、譲の隣で幸せな時を過ごしてきた。



本当、なんて図々しい女なのだろう。

< 168 / 195 >

この作品をシェア

pagetop