不順な恋の始め方
「これで2回目やで? しかも自分、お腹ん中に赤ちゃんおんの分かっとる? もう、自分だけの体やないねん。俺と柚希の大事な新しい命やねんから。何かあったらどないすんの」
いつもより若干早口で、焦ったように話す譲は、やはり怒っている。
こんな風に怒らせてしまったのは初めてで、少し戸惑ってしまうけれど、私は少し俯いて「ごめんなさい」と呟くように言った。
「連絡しても全然返事せえへんし、探したって見つからんし、大体どこ行ったかなんて分からへんし……ほんま、心配かけんといてえな」
頼むで、と譲は力なく私の肩へと頭を乗せ、また私を抱き寄せた。
その言葉と、行動と、優しさと、愛しさと。
譲の全てに私の心はまた揺らぎかける。
……でも、そんな事は許されない。
「仕事は……どうしたんですか?」
「ちょっと遅刻する言うた。柚希は今日休みやろ?」
譲の問いかけに、私は返事をする代わりに一度だけ頷いた。
すると譲は「中入ろう」と私の手を引いて家へと歩き出した。