不順な恋の始め方
ちづに、大きな未練なんてなかった。
ちづと俺は、確かに2年前まで3年程付き合っていて、美羽もその存在を知っていた。
だが、3年も付き合っていたというのにまるで結婚をする気が起きなかった俺にちづは嫌気が差したのか、いきなり俺の前から消えた。
そして、次に会った時には既に他の男と結婚していた。
そりゃあ最初の方は未練もあっただろうけど、すぐに消えたし、寧ろちづには幸せになってもらいたいと思えた。
ただ、とうぶんそういう〝恋愛〟とかはしなくてもいいなと思っていた。
だけど、俺は簡単に柚希を好きになった。
ちゃんと、大事にしたい、と。
結婚したいと、心の底から思った。
「せやから一緒におんねんで」
そう、俺の囁いた先。
俺の膝に頭を乗せているのは、泣き疲れて寝てしまっている柚希。
俺は愛しい彼女の髪をそっとどけて、額にキスを落とす。
仲直りを終え、泣き疲れている彼女の表情は、柔らかく、幸せそうで。
そんな表情を見ている俺も、たまらなく幸せだった─────。