不順な恋の始め方

「俺が元カノに未練が残ってるなんて、それはただの中塚さんの思い込みやで。完全に、勘違いや。」

「えっ…」

「俺が森下さんと交際してんのは、確かにこのお腹ん中におる赤ちゃんが出来たことがキッカケや。でもな、森下さんと結婚したいと思ったんはほんまのこと。ちゃんと、俺の気持ち。俺の欲やねん」



どくん、どくん、と私の胸の鼓動が少しずつ高鳴る。

こんな状況でおかしいけれど、譲の言葉ひとつひとつが嬉しくて、幸せで、どうしようもない。


でも、どんどんと暗くなる中塚さんの表情を見てしまった私の胸は、また変わり、次第に痛くなる。


ズキン、ズキン、と。まるで何かに叩きつけられるように。



「それじゃあ、2年間……ずっと坂口先輩が好きだった私の告白は……どうして一度も受けてくれなかったんですか」



真っ直ぐ、譲を見つめる中塚さんの瞳。


その瞳と、表情に、私の胸はまたズキズキと鋭い痛みを感じる。


こんなことは前から分かっていたことだけど、中塚さんは本当に譲が好きなんだと強く感じた。

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