不順な恋の始め方
「私がこのまま想い続けても、坂口先輩の気持ちは変わらない、と……?」
遠慮がちに、でも、真っ直ぐに聞いた中塚さん。譲は、返事の代わりに首を縦に一度だけ振った。
「そう、ですか………分かりました。もう、坂口先輩の事は諦めます」
ご迷惑をおかけしました、と頭を下げた中塚さんは頭を上げたかと思えばすぐにくるりと半回転。
そして、逃げるようにこの場を去ってしまった。
そんな彼女の後ろ姿をじっと見つめた後、譲はひとり小さく呟いた。
「せっかくええ子やのに、俺なんかのこと2年もなあ……ほんまに、ごめんな。ありがとう」
「譲…」
「幸せになるとええな、中塚さん」
「……うん。」
本当に、譲の言うとおりだ。
私なんかがこんなこと、本人には絶対に言えないけれど……でも、この気持ちは本当。嘘偽りない本当の気持ち。
私から中塚さんには〝ごめん〟という言葉も〝ありがとう〟という言葉も、何かが違っていて。
それでも、中塚さんには幸せになって欲しいと、心からそう思う────。