不順な恋の始め方
「はは、嘘ついとるんバレバレやで。顔真っ赤にして」
「なっ……!」
「ほんま可愛ええなあ。堪らんわ」
クスクスと笑いながら、余計に胸が高鳴るようなことを言う譲は意地悪だ。
でも、こんな意地悪にさえドキリとしてしまう私はもしかして……
「……あ。そういえば俺なあ、考えてみたんやけど」
「え?」
「俺がSやとか、そうやないとかいう話」
「あ……はい」
「多分、俺がこんな風になるんは柚希の前だけやねん。他の人イジろうとか思わんもん。」
柚希限定、と言って再びニヤリと笑う譲に私の胸は大きく跳ねる。
「柚希」
そう呼んで、ゆっくり私の顔へと自分の顔を近づけてくる譲に私は自然と瞼を閉じる。
額に譲の額がピタリと重なるのを感じて瞼を開くと、やはり目の前には譲の顔があって、さっきと同じ恥ずかしさが込み上げた
「い、意地悪っ…!」
「はは、そうかあ? 俺、キスするなんて1回も言うてへんけどなあ?」
「な、っ……!!」