不順な恋の始め方
ソファーに腰掛けたままで私に背を向けた譲は、怒ってしまったのか、それとも呆れてしまったのか。
どちらかは分からないけれど、どちらも私には嫌で。耐えられない。
「ゆ、譲…」
「……」
「譲…!」
「……」
何度肩を叩いたって、完全にこちらを向いてはくれない譲に、私は決意する。
そして
「………っ。」
背を向けたままの譲へと背後から抱き着き、譲の頰へとキスを落とした。
そんな私の行動に、譲は「まさかの頰か」と言って笑っている。
「譲……怒って、ないの……?」
「え? 怒っとるわけないやろ」
「えっ?」
「あんまりにも可愛ええから、ちょっと騙してもうた。ごめん」
許して、と言ってイタズラに笑う譲を私はやっぱり許してしまうんだ。
きっと、譲もそれを知っていてそう言うのだろうけれど。