不順な恋の始め方
「お前なあ、ほんなことばっかり言うてるけど……柚希の赤ちゃんまだかなあ、まだかなあ、会う度いつも言うとるやん。」
「ちゃ……ちゃうもん!柚希の赤ちゃん待っとるだけで、柚希のことはまだ好きちゃうもん!認めてへん!」
「へえー?」
「あはは、仁菜ちゃん、待っててくれてるんだ」
嬉しい、とつい自分の事のように喜んでしまった私。
そんな私は「柚希ちゃうってばあ!」と仁菜ちゃんに厳しく言われてしまったけれど。
私がこうして仁菜ちゃんと少しでも仲良くなることが出来たのは、本当にこの子のおかげかもしれない。
「おーい、今日も元気かあ?」
「ふふ、蹴ってる。元気ですよ〜って、言ってますよ」
ウエディングドレスの上から、お腹辺りに手を触れて語りかける譲。
そんな譲の声に応えるように、中では赤ちゃんが動いていた。
「可愛ええなあ、パパもはよう出てきて欲しいわあ」
「本当、可愛い。早く元気に産まれてきてね〜?」
「親バカやなあ、早くも。ははは」
「本当ですね、ふふ」