不順な恋の始め方
───カランカラン
アンティーク風でお洒落なドアを私が勢いよく開けて入る。すると、そのドアに取り付けられていたベルが店中に響き渡った。
「いらっしゃい・・・って、柚希じゃない。どうしたの、顔真っ青にして」
ここは高校時代から26歳になった現在まで10年近い付き合いである友人、佐々木涼子(ササキ リョウコ)が夫婦2人で営んでいるカフェ
私は涼ちゃんへと足早に駆け寄り、ガッと彼女の両肩を掴んだ。
「ねえ、り・・・涼ちゃん、どうしよう・・・私、お腹に」
まだ全く整理しきれていない私の頭の中。
あんな事実を前にして頭がうまく回転する訳もなく、私は伝わるはずもない言葉だけを途切れ途切れに並べていた。
涼ちゃんはそんな私の手を引いて窓際にある4人席まで連れて行くと、私をイスへと座らせる。
「柚希ちょっと落ち着きなさい。深呼吸でもして。なに、どうしたの?」
涼ちゃんは向かい側ではなく私の隣に腰掛け、私の背中を優しくさすり始めた。