不順な恋の始め方
私が、あの日のことでこの人の人生を変えてしまうなんて…きっと、間違っている。
それに、あの日の坂口先輩はお酒も入っていたし、きっと記憶も曖昧だったはずだ。
坂口先輩に罪はない。うん、そうだ。
「森下さん、そうやなくて」
「……え?」
自分の心の中で、坂口先輩とは結婚しないという方向で話を進めていたのだが、そんな私の目を坂口先輩は真っ直ぐ見つめてきた
「森下さんはそうやって言うてくれるけどな、俺も一応男やからさ。その…なんて言うんかな…責任?くらいはとらなあかん思うねん。……いや、ちゃうな。とらしてくれへんかな?責任」
「え……」
「確かに俺も森下さんも、間違うたと思う。世間的には、きっと、間違うてる。
でもな? 間違うたらそれで終わりっちゅーのはどおかな? 間違ったならさ、その道を正せばいいんとちゃう?って俺は思うんやけど…」
その、つまり……と坂口先輩は突然自信なさ気に口をモゴモゴとさせる
「間違うた道をそのまま歩いていけば、結果も間違うた結果しか出てこん。
でも、その間違いに気づいて、それを正すことが出来たら、ちゃんとした結果が出てくる。そうすれば結果オーライちゃう?」