不順な恋の始め方
「色々不満とか疑問とか、そういうのあるんは分かるけど、してみる価値あると思わん?」
きっと森下さんとやったら大丈夫やと思うねんなあ、俺。
そう言って笑う坂口先輩の一言が、不覚にも嬉しく思ってしまう私。
「えっと、あの……」
「ほな、よろしく。森下さん」
「あ、は、はい。
…………って!?! は、え!?!」
ぐんと私の方へ右手を差し出してきた、坂口先輩。
そして、その差し出された坂口先輩の右手を条件反射のようにぎゅっと握ってしまった私。
たった今、握られたこの手と手。
この重なった2つの手が……坂口先輩と、それから、私の恋愛を。それは、ごく自然にスタートさせた────。