不順な恋の始め方
坂口 譲 side
* * *
「……とって、ください」
「え?」
「その……眼鏡を」
「あ、あぁ。眼鏡? 悪いけど、取らへんで? だって取ったらよお見えへんから、な」
「んっ、」
間近から途切れ途切れに聞こえてくる甘い吐息と、それはもう愛らしくとても可愛い声。
それを発している彼女は手の甲を口に押し付け、何とか抑えようとしているらしいが抑えきれていないのが余計愛らしい。
……っていうか何してんねん、俺。
お酒が周り、意識が曖昧な状態で我に返りそう考える。
目の前にいる彼女も恐らくかなり酔ってるんだろうとは思うが、これは、絶対にあかんやろ。
こうやって突然冷静に考えてみたり、突然大きな波のように快感が押し寄せてきたり、また突然意識が遠のいたり。
そんなことを繰り返しながら行為に夢中に……いや、溺れてしまっていた俺。
そんな俺に再び押し寄せてきたお酒の力と快感に敵わず、意識は完全に途中から無くなってしまった────。