不順な恋の始め方

「何かあったら面白かったのになー…なんちゃって! あ、私課長のとこ行かなきゃー」

そんな冗談を言って締めくくり、意外と簡単に納得した菅ちゃんは足早にオフィスを出て行く。

そして、何故か取り残された私と坂口先輩の間には少しの沈黙が生まれた。


「え…っと、では私も「森下さん」


その沈黙を破ったのは、私。でも、その私の言葉を遮った坂口先輩。

私は坂口先輩を見つめ、なんだろうと次の言葉を待っていた。


すると、坂口先輩は少し私の耳元へと口を近づけ「今日、帰り、送らしてな」と囁くように言う

「へ……っ……?!」

そして、耳元から口を離すと、ニコリと微笑んでから去って行った


「な……ど、ドキドキした……」


つい、その場にしゃがみ込んでしまいそうになるくらい熱くなる身体。

久しぶりの感覚に、正直、私はかなり戸惑っている。


彼氏いない歴がもう3年を突破しようとしている、最早干物状態の私。

そんな私が、こんな王子様みたいな人と恋愛って……ああ、あり得ない。やっぱり夢なのではないだろうか。

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