不順な恋の始め方
……しかし、その夢みたいな事が、間違いなく現実で起こっていて。
「お邪魔します…」
「はい、どーぞ」
早く仕事を済ませ定時で退勤した私は、助手席のドアを開けていてくれる坂口先輩の車へと乗り込んだ
これは、いわゆるレディーファーストというやつで。慣れていない女の子扱いにまた少し戸惑っていた。
バタン、と助手席のドアを閉めた坂口先輩が反対側へとまわり、運転席へと乗り込む
2人きりというシチュエーションだけでもドキドキするには十分すぎる原因なのに、その場所が車って……
「はは、あんま緊張せんといてえな。こっちにも緊張移ってしまいそうやわ」
「な、えっ、あ……すみません……」
どうやら私の緊張は、既に坂口先輩にバレてしまっていたらしい。
でも正直、こんなの緊張しない方がおかしいと思うけれど。やはりモテていそうな坂口先輩は、私とは違うのだろうか。