不順な恋の始め方
「あ。そういえば森下さん長い間彼氏おらん言うとったけど、長い間ってどのくらい彼氏おらんかったん?」
「え? な、なんでそれ……」
〝長い間彼氏おらん言うとったけど〟
全く言った覚えのない台詞に、頭が少し混乱する。
だが、その混乱も坂口先輩の次の言葉により解消された。
「あー……覚えとらんかー……。
ええっと……あの親睦会の日にああいうなんするの2回目や言うとったで、前の彼氏は?って聞いたらそやって答えてくれたんやけど……」
ごめん、変な話した。
そう謝り運転を続ける坂口先輩と、あの日にそんな事言ってたのか…と酔っていたあの日の自分を恨む私。
「あの、えっと……恥ずかしながら3年近くいない……です」
すみません、と何故か付け足して謝ってしまう私に「なんでそこで謝んの」と笑う坂口先輩
坂口先輩ってよく笑うなぁ、なんて思いながらその笑顔を見つめる。
「でも、俺もそんなもんやなぁ」
「え、嘘」
坂口先輩が笑顔のまま口を開いたかと思うと、信じられない言葉が飛び出してきてつい嘘だと発してしまった