不順な恋の始め方
「はは、なんやそれ。ほんまおもろいなあ、自分。いやあ、大体俺そんなかっこようないし、全然モテへんからな?」
一体、森下さんの目には俺がどんな風に映ってんねやろなあ?
そう付け足して笑い続ける坂口先輩の横に、何故私が居るのか。妊娠したからという理由だけでいていいものなのか。
だんだん罪悪感が湧いてくるくらい、坂口先輩は本当に素敵な人だと改めて感じる。
「ちなみに、俺だって森下さんが3年も彼氏おらん事には驚いたけどなあ」
「……そうですか? 予想どおりじゃないですか? 私、こんなだし……」
胸元まである栗色の髪は、いつも後ろでひとつに束ねていて。
顔は決して派手な方ではなく、寧ろ地味な方で。おまけに、化粧もどちらかといえば薄めで。
本当に、個性も何もない地味な顔だ。
そんな私に何人も彼氏がいたことがある、と予想する方が難しいだろう。
「なんやネガティブやなあ。俺は森下さんめっちゃ可愛い思うてたけどなあ」