不順な恋の始め方
「ええ、そうか? まあ、俺はラッキーやったってことで。ひとまず、この話はしゅーりょー」
坂口先輩の言葉と同時に突然、ピタリと止まった車。
無意識に私は窓へと視線を向けると、もう既に私の住むマンションの前だった。
何故突然話をやめたのか不思議に思っていたが、それは私の家の前に着いたからだったのか。
そう納得した私はシートベルトを外してバッグを手に持つ。そして、外へ出ようとすると
「あの…ありがとうございま」
「あ!! ちゃうちゃう。そういう意味やなくて。ええっと…ちょーっと待ってな?」
お礼を言い、ドアに手を掛けた私を呼び止めると、スーツのポケットに手を突っ込み何やら探し出す坂口先輩
そんな坂口先輩を不思議に見つめながら、私は坂口先輩が何かを見つけ出すのを待つ
「あっと……これや、これ。 ほい、これ、森下さんの」
「え……っと……? 何ですか?」
何か、探し物を見つけ出したらしい坂口先輩がグーにした右手を私へ差し出してくる。