不順な恋の始め方
「さ、坂口先輩? これって、まさか」
「そう、その〝まさか〟」
「え……で、でも……あの……」
嘘、まさかの急展開。
だって、これはつまり〝同棲〟するって事だよね?
確かに結婚する事になるとすれば同棲なんて当たり前だし、遅かれ早かれする事になるのも分かってる。
でも、早くない? ちょっと早いよね?
「嫌?」
「あ、えっ! いや、そういうわけじゃなくて。あまりにも急すぎて……」
嫌ではない。そんなわけない。
寧ろ、憧れの坂口先輩と同棲出来るなんて夢みたいだし、どちらかといえば嬉しいのだけれど……
「嫌やったら無理にとは言わんけど、子供もおるわけやし体調悪なったりしたらひとり暮らしって不便ちゃう?」
それに、と付け足した坂口先輩が再び口を開く。
そして「仕事場より家の方が、ちゃんと恋愛出来そうやろ?」なんて言って笑った。