不順な恋の始め方
坂口先輩の言葉は、冗談なのか本気なのか分かりづらい。
本当に坂口先輩は、これから私と恋愛をするつもりなのだろうか……
「ほ…本当にするんですか?」
「え?何を?」
「その……恋愛、を」
口をモゴモゴとさせながら、小さな声で呟くように言う。
「え? せえへんの?」
そんな私に返ってきたのは、坂口先輩の驚いた声で。その返事に私も驚いた。
「え、あの……そういうわけじゃなくて……冗談で言ってるんだと思って……」
「はは、こんなん冗談で言うわけないやん。 ほんまにしよう思ったから言うたんやで?」
坂口先輩の声は、優しくて。温かい。
冗談じゃない という現実に安心して、それと同時に嬉しくて。
でもそれと同時に、坂口先輩と恋愛を成立させられるのかという不安とプレッシャーに見舞われたのだった────。