不順な恋の始め方

ひんやり冷えていた麦茶が、ごくりと喉元を通り過ぎていく。

緊張していたからか、若干渇いていた私の喉。そんな喉に流れ込んだ麦茶は潤いをもたらす様で、いつもより美味しく感じた。


「あ、森下さん」

「え……は、はい」

「ええっと、これからの仕事の事なんやけど…どうしたい? 続けたい?」

「え……っと……」

「この間みたいに体調崩して倒れてしまうこともあるやろうし、どちらにしろ休むなり辞めるなりせなあかんと思うんやけど…」


……確かに。

仕事に関しては本当に何も考えていなかったけれど、遅かれ早かれこの状態では働けなくなるだろう。

産休か、退職か。時間もないし、早いところどちらかを選ばないといけない。


ああ、なんでこんな大事なことを今更になって考えているのだろう、私は。


「……すみません、全然考えてませんでした。」

「せやろうと思ったわ」

はは、と笑った坂口先輩の表情が段々と真剣な表情へと変わる

< 70 / 195 >

この作品をシェア

pagetop