不順な恋の始め方
ひんやり冷えていた麦茶が、ごくりと喉元を通り過ぎていく。
緊張していたからか、若干渇いていた私の喉。そんな喉に流れ込んだ麦茶は潤いをもたらす様で、いつもより美味しく感じた。
「あ、森下さん」
「え……は、はい」
「ええっと、これからの仕事の事なんやけど…どうしたい? 続けたい?」
「え……っと……」
「この間みたいに体調崩して倒れてしまうこともあるやろうし、どちらにしろ休むなり辞めるなりせなあかんと思うんやけど…」
……確かに。
仕事に関しては本当に何も考えていなかったけれど、遅かれ早かれこの状態では働けなくなるだろう。
産休か、退職か。時間もないし、早いところどちらかを選ばないといけない。
ああ、なんでこんな大事なことを今更になって考えているのだろう、私は。
「……すみません、全然考えてませんでした。」
「せやろうと思ったわ」
はは、と笑った坂口先輩の表情が段々と真剣な表情へと変わる