不順な恋の始め方
距離の縮め方



────同棲生活、1日目。



「ほらぁ、だからやめとき言うたやろ?」

「う」

「どないすんの、これ」

「わ…私が処理します。すみません」

「え? いや、そういうつもりで言うたんやなくてやなぁ」



カーテンから心地よい日差しが差し込んでいる今日、早くも問題が発生した。

2人して同じように眉を八の字にしている私と坂口先輩。そんな私達の目の前にあるテーブルへ置かれているのは、何やら黒い物体で。


「なあ……いっこだけ確認してええか? これ、ほんまにフレンチトースト?」


実は〝黒い物体〟というのは、フレンチトーストの事。

どこからどう見ても黒い物体にしか見えないが、これは紛れもなくフレンチトースト(の、つもり)だ。



「はい……フレンチトースト、です。間違いなく。」

「ほう、そうかあ……うん。分かった。まあ、とりあえずもうひとつは俺に任せて。な?」

< 79 / 195 >

この作品をシェア

pagetop