不順な恋の始め方
距離の縮め方
────同棲生活、1日目。
「ほらぁ、だからやめとき言うたやろ?」
「う」
「どないすんの、これ」
「わ…私が処理します。すみません」
「え? いや、そういうつもりで言うたんやなくてやなぁ」
カーテンから心地よい日差しが差し込んでいる今日、早くも問題が発生した。
2人して同じように眉を八の字にしている私と坂口先輩。そんな私達の目の前にあるテーブルへ置かれているのは、何やら黒い物体で。
「なあ……いっこだけ確認してええか? これ、ほんまにフレンチトースト?」
実は〝黒い物体〟というのは、フレンチトーストの事。
どこからどう見ても黒い物体にしか見えないが、これは紛れもなくフレンチトースト(の、つもり)だ。
「はい……フレンチトースト、です。間違いなく。」
「ほう、そうかあ……うん。分かった。まあ、とりあえずもうひとつは俺に任せて。な?」