不順な恋の始め方
しばらく待つとキッチンの物音が消え、こちらへと足音が近づいてくる。
「なんや、拗ねとるんかー?」
「な、拗ねてなんかないです!子供じゃないですから!」
慌てて顔を上げると、目の前には1枚のお皿を片手に持った坂口先輩がいた。
坂口先輩は屈み込んで私と目線を合わせると不敵な笑みを浮かべ、お皿に綺麗に盛られているフレンチトーストを見せてきた
「ほれ〜、見てみ」
「な……」
悔しいが、ちゃんとフレンチトーストだ。
坂口先輩の手によって作り上げられたフレンチトーストは、ちゃんと綺麗な黄色。いや、きつね色という方が正しいだろうか。
私の作ったフレンチトーストのように丸焦げではなく、所々茶色く色のついた部分が何だか香ばしくて。絶妙な焼け具合。
思わずゴクリと息を飲んでしまうような見栄えに、私は自分の不甲斐なさを痛感した。