不順な恋の始め方
「これから夫婦になるっちゅうのに名字呼びってのも変やろ?」
「そう、ですね…」
「さん付けも悪ないけど、ここはやっぱり〝ゆずる〟呼びで頼むで柚希さん」
「わ、分かりました……」
ゴクリと息を飲む。
そして、深呼吸を深く、一度だけ。
心を落ち着かせた私は、あまり意識をせずにとりあえず名前を呼ぼうと心がける。
そして、目を閉じたままで小さく呟くように名前を呼んだ。
「ゆ……ゆ、ずる……」
「はい、よう出来ました」
目を開けると、目の前にいる譲が私の頭へと手を伸ばした
そして、くしゃくしゃと頭を撫でると「ほな朝ごはんにしよか」と笑う。
自分の前には私の作った丸焦げのフレンチトースト。そして、私の前にはもう片方のフレンチトーストを置く譲に私は首を傾げる
「えっと、さか…じゃなくて…ゆ、譲はこっちじゃ…」
「え? ああ。ええよええよ、気にせんとこっち食うて」
「え、でも」
「大丈夫大丈夫。ちょっと焦げてるだけやし、どうもないやろ」