不順な恋の始め方
「いや、でも、私が………あっ!!」
私が食べます!と言ってテーブル上にある丸焦げのフレンチトーストを奪おうとすると、譲はそれをフォークに刺して口へと運んでしまった
「あ…わ…食べた……」
あまりにも豪快に大きな口を開けた譲は、四つ切りにしてあったフレンチトーストを一口で食べた
もぐもぐと口を動かし、ゴクリと飲み込むと「あれ、意外といけるもんやな」と言って笑う。
「え……そう、ですか? って、いやいや、そんな訳ない!」
あんなに丸焦げで、何か黒い物体にしか見えないようなフレンチトースト。
私には……いや、誰が見たってあれが食べられるものだとは到底思えない。
「む、無理しないでください! 私が処理します本当に…!」
「いやいや、柚希が処理するんはこっちやで」
「いや、いやいや、私がこっちを」
あと3切れ残っている、フレンチトーストという名の黒い物体。
私は何とかしてその黒い物体を自分自身で処理しようと試みるが、譲がそれを許さない。