不順な恋の始め方


なんて、聞くこともできず私は譲の車へ乗り込むと一緒に会社へとやって来た。

駐車場から会社へと入るまでの間、私はキョロキョロと辺りを見渡し、譲とはある程度の距離をとって歩いていた。

そんな私に譲は「そない警戒せんでもいつかバレるんやから」なんて言っていたけれど……


「もしバレてしまった後、大喧嘩しちゃってこの話が無しになったりしたら色々困るじゃないですか」


それに、譲がもし私の事を好きになりきれなかったら……周りにばれていることで、余計に別れを切り出せなくなってしまうだろうから。

そんな私なりの気遣いなんて知る由もなく……いや、あるいはそんな可能性を考えていないのか、譲は私を見て微笑んだ


「喧嘩したら仲直りすればええやん」

「え?」

「ぶつかったって、いっぱいちゃんと話して、向き合って。ほんでまたやり直そう?な?」


譲の笑顔に、私は何故そんな心配をしたのか、自分の思考回路に呆れた。

そのくらい、譲の笑顔を見ていると安心できるというか何というか……

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