彼女の願いを【短編】
破綻の始まりは、まず彼女が家から出なくなったことにあった。仕事はおそらくクビになったのだろう。
この暮らしが始まってからしばらく、執拗に鳴り続けていた携帯電話は既に音を発することを諦め、充電もされなくなった。
そして、誰にも邪魔されず二人の時間を楽しむことにも慣れた頃、突然に現れたのは彼女の妹だった。
唯一、面識のあった彼女の妹が急に連絡の取れなくなった姉を心配し、訪ねてきたのだ。
勿論、当たり前の行動だが、ちょうど彼女が眠りに着いたばかりだったことを口実に俺は心配はないことだけを告げ、追い返してしまった。元々、口数の少ない俺を知ってか妹は諦めたかのようにその日は帰っていった。
だが、それがいけなかった。