彼女の願いを【短編】
俺は無理矢理、病院を抜け出し、躊躇する彼女の妹を引き連れ、彼女のいるはずの場所へ急ぎ向かった。
妹は「もう遅い。無駄なことだ」と何度も口にした。
だが、俺に諦めきれるはずもない。彼女は俺の全てなのだから。
目的の場所へ着くと、まだ彼女はそこに留まっていた。
いや……、正確にはもう留まってはいなかったのだと思う。
……冷たく、硬くなった脱け殻だけが……そこに横たわっていた。
もう、彼女ですらない其れは小さく、以前は美しく輝きを放っていた身体も既にその艶を失っていた。
俺は過ちを犯したのだ。なんという取り返しのつかない過ちを……