罪づけ




透吾と以前よりまめに会う、そういう関係になって。

大抵は金曜日。透吾が早めに仕事を終えられそうな時。

私の家で宅飲み、たまに私の家の近くでなら外で飲むことも。



近くに知り合いが通ることなんてなさそうな家だから、安心してふたりの時間を過ごすことができる。

もちろん多少なりとも警戒はしているけれど。



会う時は緊張してどきどきするし、罪悪感にかられることもある。奥さんにバレないよう、行為の際は私は彼に跡をつけないように気を遣わなくてはいけない。

それでも、私にとってはつかの間の時間がとても大切なの。



高坂さんと終わってから、彼が私の居場所を、笑顔をくれたから。

もうその傷が痛むことがなくても、そばにいてくれる優しい人だから。



『金曜日なら大丈夫よ』



便利な電子機器。言葉が文字として並べられると、隠したいざわめく心は伝えずに済む。

平静を装って、返事を返した。



「よし」



最後の一欠片を口に放りこみ、お弁当の蓋を閉じる。手提げに水筒と一緒にしまってスマホの画面を消した。

透吾からの返信は確認せずともいいだろう。どうせ『じゃあ金曜日に』とかそんな感じでしょう。



昼休憩も、そろそろ終わり。

さっさと戻って今日の分の仕事を片づけちゃおう。



小さな約束が私の機嫌をよくする。

午後からの仕事があっという間に終わる予感がした。






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