罪づけ




人にも恵まれているおかげで、仕事はとてもしやすい。



だって、高坂さんは、今はここにはいないから。



別れた次の週に発表されたのだけど、彼は関西支社に行くことになっていたらしい。

本社じゃなくなるとはいえ、それなりな役職につくことになったとかで。つまりは栄転。



もし私がまだ彼と付き合っていたら、応援する気持ちと不安な気持ちで押しつぶされそうになっていたのかもしれない。

とはいえその時には既にお別れしていて。美緒ちゃんとの結婚も出ていて。

そしてなにより私は透吾との関係を始めていたから。



だから他の人と変わらないように「おめでとうございます」と笑った。

笑った……確かに、いつも通りに。



最後でも泣かなかった私らしく。

強がって、辛くないふりをして。心はすれ違ったままでいいと思った。



感情のすり合わせなんて、今更しても無駄。意味はないし、虚しいだけだから。

誤魔化すことに、逃げ出すことに、後悔なんてなかった。しないつもりだった。



美緒ちゃんは彼について行くこともあり、周りの人に祝福されながら寿退社。

手伝ってくれる事務の子は今度はどんな子かなぁと男性社員。美緒ちゃん、いい子だったもんねぇと女性社員。

そうですね、と私は。
私は────どんな表情をしていたのだろう。



彼とのことを知っていた人はこの部署には誰もいない。



みんな、去って行く。

取り残されて間違いへと足を進めたのは、大切な人を巻きこんだのは────私だけ。






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