罪づけ
鞄を持ち直す。
肩に重圧がかかり、一瞬だけの衝撃とはいえなかなかな重みにくっと堪える。
お財布・ポーチ・ペンケースに手帳と持ち出しても問題ない仕事の資料。大したものは入っていないけど、毎日繰り返し家と会社の間を動き回れば面倒にも感じる。
とはいえとても大切なもの。しっかりと抱えた。
エレベーターにひとり乗りこんで下がっていく階の表示を眺める。
独特の浮遊感に嫌な顔をしながら1階に。開いた扉をくぐり抜けた。
そうして、1歩足を踏み出したそこにはなぜか書類が散らばっていた。
「わ、っと……」
なに、これ。どうして1面紙なの?
すんでのところで踏みそうになった足を上げて、紙のないところに足を下ろす。ぺらりと拾い上げた。
「企画書……」
私とは関わりのない書類。これはおそらく営業用のもの、よね。
一体誰が? と首を傾げたところで、
「すみませーん」
緩い、力の抜けてしまいそうな声。私に向かって発せられたその声の持ち主は、そこまで親しくはないけれど知っている人。
「岡村(おかむら)くん」
「あれっ愛さんだー。お疲れさまです」
にこにこ笑って人好きのしそうな顔をしている彼は岡村 京介(おかむら きょうすけ)くん。
私のひとつ下という若さで、うちの会社の営業のエースにまでなった敏腕な彼は誰もが知っている存在。
以前、社の交流会という名目の飲み会で話した程度だけど、見かけたら声をかけてくれるようになった。
彼も私にはないものを持っている人。