罪づけ
それは、濁った透明。
『おれたちの関係は秘密にしよう』
『えっと……どうしてですか?』
『仕事に支障をきたすからだよ』
『私、きちんと切り替えるつもりです』
『おれが、お前に触れたくて仕方がなくなるから。だからさ、頼むよ』
『……わかりました。先輩がそう言うなら』
『ありがとう、愛してるよ』
『私も。私も先輩のこと、愛してます』
『いつか一緒になろうな』
『……はい!』
■
「……た、」
「ん、」
「ま、……」
「んん、ぅ〜〜」
「沼田!」
ゆらゆらと揺れていた肩。耳に入ってきていた音をようやく言葉と認識して、私は重たいまぶたを持ち上げる。
「沼田、こんなとこで寝んなよ」
「あれー、前野じゃなーい。どうしたのよーぅ」
「どうしたもこうしたもないよな、お前が飲みに連れ出したってのに」
そうだっけ? 私、そんなことした?
覚えてない。でも前野が言うならそうなのかもしれない。うん、そうに違いない。
そういえば定時で上がって前野を連れ出した気がしてきた。
「んふふ、そっかー。前野と飲む酒はー、んまい! ガンガン飲めるわよー!」
「いやいや、これ以上飲むの禁止だから」
ひょい、とグラスを奪われる。ゆらゆらと揺れるお酒が欲しくて手を伸ばすも、リーチの差と力の入らない体のせいで届かない。
「前野の意地悪ー」
「意地悪じゃないからこれ」
呆れたように、困ったように笑う前野が面白い。いつもだったら私がしている表情を彼がしてるなんて。
楽しくてふふっと笑った。