罪づけ
もし、高坂さんと付き合っていなければ。当時、透吾が私へ想いを打ち明けてくれていたら。
そんなことを考えたことがなかったと言えば、嘘になる。
どうしようもない。それでも、たらればを頭によぎらせてしまうことは、仕方がない。
だけど、結論はいつでも同じなの。
きっと透吾のそばにはいなかったと。
私にとって高坂さんが1番好きだったこと。誰よりも隣にいたかったこと。……愛していたこと。
それは変わらない。透吾を想うようになった今でも、その事実は変わったりはしないの。
だって私、辛いこともあったし、終わり方も綺麗ではなかったけれど、彼と過ごした時間を無駄だったとは思っていないから。
後悔なんてしていないから。
だからきっと、私は何度あの時を繰り返しても、高坂さんを選んでいた。
そうして、別れてからようやく透吾に想いを寄せるようになるのよ。
噛み合わない私たち。想いあっていようとも、きっと今の道しかなかった。
虚しくて苦しくて、心が迷子になってしまっても。……罪に汚れた、これしか。
「ねぇ、透吾」
「……なに?」
もうほとんど寝ていたのか。声が既に寝ていて、少しの時差の後に耳に流しこまれる。
微睡みそうになっているくせにちゅ、ちゅ、と頬や髪に唇が触れてくる。
「……なんでもないわ」
あまりにも甘い、麻薬のような響き。
あなたがたくさんくれるもので、私の胸は罪悪感と高揚で埋め尽くされた。