罪づけ




各階に自販機は設置されている。けれど2階にだけは他と違って、いい自販機が置いてある。

普通は各コーヒーをホットかアイスかの選択ができるだけ。

それなのに、これはコーヒーの質が違うのはもちろん。濃さ・砂糖・クリームの量まで選べて、さらにものによってはクリームのふわふわ感も調節できる。



その分値段は高めに設定されているけど、小さな贅沢。今日は疲れたし、たまには自分を甘やかしてもいいわよね、と小銭を投入した。



いつもなら悩むことなくオリジナルブレンド。でも今日は疲れを癒したいし、甘いものが欲しい。

珍しくカフェオレのボタンを押した。



コトン、と落ちてくる紙コップ。注がれていくコーヒーをぼーっと見つめる。



「愛さーん!」



突然呼ばれた私の名前。軽く走って来る足音まで聞こえる。



後ろを振り向けば、そこにはにこにこ笑顔。……岡村くんだわ。



「お疲れ様ですー」



岡村くんと顔を合わすのは、この前エレベーターの前で企画書を拾うのを手伝った時以来。

相変わらず元気そうね。



今日は内勤なのかしら。

社内で岡村くんに会うのは珍しいのに、こんなに頻繁に彼と顔を突き合わすことになるなんて。






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