罪づけ
「愛さんがここの自販機でコーヒーとか珍しいですねー」
まぁね、と返しながらできあがったコーヒーを取り出す。
うん、いい香り。
「しかもカフェオレ? 甘いのじゃないですかー!」
「今日はそんな気分だったのよ」
お酒は甘いものばかりだけど、コーヒーはできるだけそのままの香りや味を楽しみたい私。
そのことを知っている人からすると、やはり珍しいのかしらね。
お次どうぞ、と場所を譲れば岡村くんがいそいそと小銭を取り出す。
そういえば、私は彼の好みを知らない。
私も透吾も、ふたりともここの自販機ならオリジナルブレンドが1番好みなのだけど、岡村くんならエスプレッソ? 女子社員のごとくキャラメルラテも似合うわよね。
「岡村くんはなににするの?」
私より少しだけ身長の高い、岡村くんの後ろから顔を覗かせつつ尋ねる。
「おれはいつでもココアですよー!」
コーヒーですらなかった。
「岡村くんの方が甘いじゃないの」
「俺、学生の頃から好み変わってないんですよ」
つまり昔からコーヒーは飲めないと。
まぁそうね、岡村くんってそんな雰囲気だわ。
わざとらしくため息を吐きながらも、小さく笑う。
いい話し相手を手にしたとふたりでしばし談笑。
さすが営業のエース。話し上手で聞き上手。
この私が相手なのに会話は弾むし、すごく気が楽だわ。