罪づけ




あ、しまった。会話しているふたりの間に挟まれる形になってしまった。

明らかに邪魔だと感じる私の存在。



それに……。



ちらりと透吾に視線をやる。感じとられないほどの短い時間で、顔を元に戻す。



社内でなかなか会わないのは岡村くんだけじゃなくて透吾ともで。

久しぶりに前野と苗字を呼んで。

人前で言葉を交わして。



嫌だな……ドキドキする。

なんだか恥ずかしくてたまらない。



勝手に緊張してるなんて気づきもしないふたりは楽しげにいまだ話している。

昔と変わらない姿にわずかに頬を緩めた時、



「っ、」



透吾の指先が私のものに軽く絡まった。



触れた温度はここ数年でずいぶんと馴染んだもの。その指が、骨ばった関節が、血管の浮いた手の甲が、愛おしく心地よいものだと知っている。

だけど、今はだめ。



こんな風に手を繋ぐ関係だと周りにばれたら、会社にいられない。立場がなくなり、遠慮ない噂が広がる。

そうなったら困るのは誰か。



────透吾なのよ。



こればっかりは岡村くんにだって知られてはいけない。奥さんだけを愛する彼にはきっと、この感情や関係は理解できない。



始めは誰かに罵られたって気にとめやしないと思っていた関係も、それが透吾に影響するというのなら話は違う。

誰にも気づかれてはいけない。

わかってる、のに……。



私には、振りほどくことができない。



冷や汗をかくほど緊張していて、呼吸も苦しい。こんな状況で、と思うのに嬉しくて頬が熱を持つ。



ああ、私、この人が好き。

とても、……好きなの。






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