罪づけ
「今日は愛の家で食べて行っても大丈夫?」
「いいけど、今日はなんの準備もしてないからご飯ないわよ」
「コンビニにでも寄ろうか。たまにはいいだろ」
栄養バランスや体重が、と思いつつも仕方がない。明日からはまた気をつけよう。
透吾に料理を作ってあげるの、結構好きだから。また美味しいと言ってくれるようなものを用意しておくことにする。
そう思って頷けば、透吾が珍しく目を細めて口角を上げる。
まるで眩しいものを見つめるように。
なのに……いいえ、だからなの? どこか傷ついているような、笑み。
「そんなに見つめてどうかした?」
はた、と気づく。気づいてしまう。
首を傾げて、透吾はきっと装っているの。普通を、いつも通りを。
だからいく度となく繰り返したやりとりを。私は、なんでもないと応えるしか、選択肢はない。
子どもみたいに手を繋いでいた。
ふたりの間でゆらゆらと揺れていた。
それが泣きそうなほど、愛おしかった。
だから、
「いいえ」
私も笑って誤魔化す。
透吾は笑っていて、手は触れ合っていて、珍しく金曜日以外にふたりでいることが嬉しくて。
ひとりじゃないだけで買い物が義務じゃなく、こんなにも幸せな気持ちになれるものだなんて知らなかった。
新しく知ることができたことに浮かれそうになりながらも、ふとした瞬間に透吾が遠い気がして。
……さみしかった。