罪づけ
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待ち合わせにしていたのは、私と透吾の関係が変わった日に飲んでいた店。
あの日から1度も来ていなかったから、とても久しく感じた。
でも、あれから随分時は流れた。あの時抱いた羞恥心や罪悪感は薄れ、せっかくだからとここで飲むことにしたの。
私からの連絡になにも訊かず了承の返事をしてくれた透吾。
それでも少し仕事が長引いたようで、彼が来た時には私は結構お酒を体に取りこんでいた。
一応ソフトドリンクを挟んだりしてセーブしていたのだけど、それでもそれなりな量で。
透吾が店に訪れた時には、
「あー、透吾ー! 遅いわよーぉ」
私は軽く酔っ払っていた。
「愛……俺が来る前にどれだけ飲んでたの?」
「んー? そんなに飲んでないわよ。だからそこまで酔ってないでしょー?」
「いやいや、酔ってますけど」
うーん、おかしいわね。そんなつもりはないのだけど。
睡眠不足が祟ったのかしら。
「まぁいいわ、透吾も飲みなさーい!」
「なんだなんだ。急にどうしたの?」
「今日は楽しく飲むの! ふたりで美味しいお酒にするのよ! ……いつも通りにしたいの」
「っ、」
まだ、まだいけない。
表情に気持ちを乗せてはいけない。泣いていい時ではない。
今日は笑顔で過ごしたいって約束を取りつけた時から考えていたの。
今までになく緊張する。とても悲しい。
不安でどうしようもなくて、眠れなくなって、今日が来ることが怖かったのに心待ちにして。
それは全て、透吾と私のため。
だから……、
「すみません、生ひとつ」
透吾は店主にそう声をかけた。店の雰囲気に合った、曲線の美しいお洒落なビールグラスを受け取る。
私と視線を合わせて、笑みを浮かべた。
「乾杯、でいいかな?」
泣きそうに私も笑って、飲みかけのグラスを彼のものと擦り合わせた。