罪づけ




いつもと変わらないように、可能な限り同じふたりで。

お酒を飲んで、言葉を交わして。何度も笑う、視線で心に焼きつけるようになぞる。



そうして、いつもなら店を出る頃合いになって。

勘定を済ませた。また訪れる日は来ないかもしれない、そんな店の扉の向こうに抜けた。



これからどうしよう。そんな感情が透けて見える透吾。



「じゃ、」

「私の家、でしょう? 早く行きましょうよ。ね?」

「……」



笑って促して私の部屋へと。

言い淀む彼の言葉を遮って、立場が弱い彼をわかっていながら丸めこんだ。



本当は帰るつもりだったんでしょう。
一緒に飲むことはできても、もうマンションには、私の部屋にだけは来ないつもりだったんでしょう。

そんなこと、わかっていた。



だけどそんなこと、許せるはずもなくて。

困った顔をしながらも、了承してくれる彼に私は甘えている。



何度もひとりで歩いた。

けれどそれよりずっと少ない数なのに印象深い、透吾の隣を歩いたこの道。



「……」



気にならなかった沈黙。歩幅は違うのに、タイミングは同じの足音。電灯に揺らぐ影の長さ。絶対に私を車道側には歩かせない気づかい。

全てが嬉しかった。大切だった。



……たまらなかったの。






< 48 / 62 >

この作品をシェア

pagetop