罪づけ
そもそも彼は愛妻家だと周りから評されていた。
そして、その姿は嘘ではなかったことを、私は誰よりもわかっていた。
透吾はそんな嘘を吐くような人じゃない。愛していない人と体の関係を持とうとする人じゃない。
愛していない人と、結婚なんてする人じゃない。
だから私と奥さんのことを比べずに、純粋に彼女を愛しているかと問えば、肯定していたであろうことが伺える。
訊かなかったのは私。
訊けなかったのは……私。
ねぇ、と呼びかけて、透吾の手にそっと自身のものを重ねる。
「あなた、1度も私のことを否定せずにいてくれたわよね」
高坂さんや美緒ちゃんのことをひどい、と怒ってくれた。
それでもふたりを大切に思う私の気持ちを汲んでくれた。
私を笑顔にしようとしてくれた。
私が高坂さんのことを吹っ切れたあともそばにいてくれた。
いけないことだとわかっていながら続ける関係を嫌がったりしなかった。
私を求めてくれた。
透吾がくれたものはあまりにも多い。
「透吾が私に付き合ってくれたから、私はもう大丈夫」
それでも、だからこそ……っ。
愛しているからさみしくて。
愛しているから哀しかった。
だけどその感情さえも、あなたからの、未来のための贈り物だと気づいてしまったから。
私はそれを受けとめて、歩き始めなければいけない。