罪づけ




「あなたの腕の中で、私は笑顔になれたの。あなたの口づけが、私に幸せを感じさせてくれたの」



ねぇ、大切なあなた。



「透吾の腕の中だったから、私また、未来を思うことができた」




誰より欲しかった、あなた。



「透吾のおかげよ」



これは、お別れの挨拶よ。






高坂さんと別れてから、私は結婚なんてできないと思っていた。

そして、透吾に想いを寄せるようになってからは、彼以外の人と永遠の約束などしたくないと。



会社の人の、友だちの結婚話を聞いた時に考えた。

岡村くんに幸せかと問われたあの日にも、考えた。



昔の私は、小さく質素であろうとも結婚式はしたかった。ウェディングドレスや白無垢には憧れがたくさん詰まっていた。

子どもを産むなら年齢も気になるし、親にだって連絡を取るたび急かされる。

そうやって何度も、考えて。



それでも結婚したくないと思ったのは、それが透吾との関係が終わるということを意味していたから。

今でも私は、透吾との関係を終わらせたくなどなかった。



それでも。私には透吾がくれたものがある。

────愛がある。



愛される喜びを。
愛されたいという気持ちを。
全てを投げ出した私にもう1度くれた人。

透吾のおかげで、愛をなくしていた私はまた、人を愛することができたから。



だからもう大丈夫。

あなたがそばにいなくとも、あなたのくれた幸福が私を支えてくれる。





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