罪づけ
重たいため息を吐く。自分の吐く息がお酒の香りがして気持ち悪い。
明らかな飲み過ぎ。
わざとだとは言え、さすがに酒量を間違えたわね。
酔いもさめてきてしまった。
「帰りましょうか。前野には家で奥さんが待ってるものね」
そう言って体を起こした時。
ふわり、とためらいがちに前野が私の頭に触れた。
髪をなぞるように、丁寧に。気を遣った柔らかい触れ方。
とても、……優しい。
「前野……?」
「なにも、言わなくていい。俺も、お前に言える言葉なんてもってないから」
高坂さんとは違う、彼の手に涙腺が刺激される。
滲んで、歪む視界。
哀しい色をした、世界。
「いつか一緒になろう」
「え?」
「高坂さん、初めにそう言ってくれた。嬉しかった。それだけで幸せだと思ってたわ」
誤魔化された気がしなかったわけじゃない。
だけど、はにかむように笑った彼を初めて見て、それでもいいかなと思ったの。
私は高坂さんを想っているだけで十分だと思ったから。
「でも、欲張りになっちゃったの。私、……私がっ、高坂さんのお嫁さんになりたかった」
ねぇ、高坂さん。
私、あなたがとても好きでした。
嫌だと思うところもあったけれど、丸ごと許してしまうほど想っていたわ。
私の愛は、確かにあなたと共にあったのよ。
高坂さんよりずっとあたたかい前野の手を包みこむ。
私の手の中に閉じこめて、瞳を閉じた。